ナースプラザ福岡

この建物は、福岡県下約2.8万人の看護職にたずさわる方々を会員とする(社)福岡県看護協会の拠点施設であり、看護師のポストエデュケーションのための教育・研修施設として設けられた。
 平成16年6月、5社による指名コンペが行われた。非常に活発な看護教育・研修プログラムをスムーズに行うための機能性と、看護師の施設であることを象徴するやさしさ、柔らかさ、暖かみの表現が強く望まれた。

 敷地は箱崎宮参道の南側に位置している。南側は国道3号線と妙見通りを結ぶ幅27mの計画道路に接し、東側は地下鉄箱崎宮前駅へ通じる歩行者中心の生活道路(小径)に接道する。特に東側の小径は、箱崎宮花庭園、箱崎宮グラウンド、東福岡バプテスト教会や低層住宅が並び、緑豊かで歴史を感じさせる大変魅力的なヒューマンパスである。

 配置計画においては、この敷地特性を最大限に活かして、車のアプローチは南側のみとし、人のアプローチは東側のヒューマンパスを中心とした。さらに東側の外壁を後退させて並木道を設け、花庭園やグラウンドの保全された緑(植栽)を伸張し、箱崎宮参道につながる緑の小径を創出することを目指した。

 建物は、大きく性格を分けた2つの表情を持つデザインとした。ひとつは研修室を主体にした3階建ての中央キューブであり、教育施設として端正な表情とした。

タイル貼りの外壁には博多献上帯の模様を施して周辺の歴史感と調和させている。もうひとつは、活動の様子が外部からも窺えるように、ガラスを主体とした開放的な表情を持つ2階建ての部分であり、ゆるやかなカーブを描いた柔らかなフォルムで、中央のキューブと融合している。この2つの表情が交差する敷地東南部の角地には、白いナースキャップを表象する楕円形のナースセンターを施設のシンボルとして配置している。 

 内部空間は、その全てが光と風に満たされ、暖かさ、清潔さ、静けさをもった女性らしく、また開放的な空間を目指しており、各研究室と廊下の間仕切りにはガラスを用い、人の動きが垣間見える活動的な雰囲気を演出した。建物の中央には500人規模の研修ホールを配し、両側にダブルスキンのガラスサッシュを設けて、自然光を入れながらドラフト効果による中間期の自然換気も充分に可能なように配慮している。
 
 エコロジカルな新しい試みとして、構造的なPC杭を利用した地熱交換空調システムを採用しており、全館に約2~5℃の地熱交換された外気を導入して空調補完を行い、省エネを試みた。また約140tの雨水槽を設けて洗浄水等(中水)に利用し、中水における雨水利用率73%を達成している。

 照明計画は、共用部分は可能な限り間接照明にして、柔らかな雰囲気をかもし出すことに努めるとともに、全館の照明を色温度2,500K程度に統一し、夜間も暖かな光環境を創出している。

建築主

公益社団法人 福岡県看護協会

用途

看護教育研修センター

所 在 地

福岡県福岡市東区

竣  工

2007年3月

延床面積

4,144㎡

備考

設計プロポーザル特定
社)照明学会九州支部 優秀照明施設九州支部長賞

構造規模

鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
地上3階